カンボジア視察研修記

1本の電話から

左から、三橋成文師(証券マンから出家し、無着成恭老師の徒弟)・私・佐野俊也師(北海道えりも町法光寺住職)・三部義道師(山形県河北町宿用院住職)・染谷典秀師(茨城県総和町安禅寺副住職)

社団法人シャンティ国際ボランティア会(SVA)のプノンペン事務所前にて。所長:加藤栄氏(左端)、学校建設事業調査員:伊藤解子氏(後列女性)。北海道えりも町法光寺住職佐野俊也師(前列真中)はSVAを通じて小学校建設費を寄附。

カンポート州アンコール・チェイ郡チャムベイ集合村ダウム・ポー村にあるダウム・ポー小学校と児童。(プノンペン市南75㎞)
村で建設できないと廃校となってしまいます。地域住民4229名、在籍児童数325名、就学年齢児童数436名。

「ご無沙汰しております。法光寺の佐野です」この1本の電話から始まった今回の海外研修。佐野俊也師は、平成9年2月、特派布教師としてこの鵜殿の東正寺に来て頂いています。この4月に亡くなられた熊野市有馬町安楽寺住職佐野良雄老師は、俊也師のお爺さんの弟です。その縁で、当時三重県第二宗務所の所長をしておられた良雄老師の長男、熊野市井戸町三光寺住職佐野友信老師が俊也師を特派布教師として、この熊野の地に呼んだということです。その時のご縁により、今回電話を頂きました。

前回、カンボジアを訪問した時、小学校を建立したいと発願し、帰国後、特派布教の謝礼や托鉢の浄財を積み立て、おおよそ目標の金額になったので、社団法人シャンティ国際ボランティア会(SVA)を通じて具体的に話が進み、今回その小学校の建設予定地に訪問視察の運びとなったとのことです。
「ご一緒にどうですか?」
「(行きたいなあとすぐ思ったけど)・・・急なので2、3日考えさせてください。家族に相談しないといけないし」ということで電話を切りました。
家族に説明すると、何の疑問もなく全員賛成。数日後、ご一緒させて頂く旨の返事をし、早速パスポートの申請。

北海道えりも町の佐野俊也師からのお誘いの電話により、もう日本を出ることはないと思っていたのが三回目の海外への旅立ちとなりました。
ちなみに過去の2回は、昭和55年に9泊10日で中国の太白山天童景徳禅寺の落慶法要に随喜させて頂き、昭和60年には、7泊8日でオーストラリアに新婚旅行です。

今回の視察の予定は、成田空港からタイのバンコク空港へ行き、バンコク空港からカンボジアのプノンペン空港へ。プノンペンでは、専用車で、まずSVAプノンペン事務所でオリエンテーション。ニロード図書館視察、ダイアット図書館視察、今回の最大の目的地ダゥム・ポー小学校視察、職業訓練所視察、チェン・アイク慰霊塔視察、ツールスレイン虐殺博物館視察、セントラルマーケット視察。タイのバンコクではSVAバンコク事務所事業視察、クロントイスラムの視察等です。

参加メンバーと目的

カンポート州アンコール・チャムペイ集合村ダウム・ポー小学校。教室の中の子ども達

建設予定地。校舎1棟(5教室)、トイレ1棟(4部屋)、教室備品の供与(児童用机・椅子120脚、教師用机・椅子5組、黒板5枚、教壇5基)5名の住民を建設労働者(簡易労働)に雇用。簡単な技術が習得できると同時に、雇用機会を供与。

佐野師が、今回私をカンボジアに誘ってくれたのは、私が難民キャンプへの援助物資「慈愛の衣類を贈る運動」を平成2年から5年までの4年間やっていたことと、平成元年から募金箱を本堂に置き、集まった浄財を社団法人シャンティ国際ボランティア会(SVA)を通じてタイ・カンボジア・ラオス等の子ども達の教育関係資金として送付していることを知っていたからだと思います。メンバーは5人。

佐野俊也師
北海道幌泉郡えりも町法光寺住職

三部義道師
山形県西村山郡河北町宿用院住職・宗門特派布教師・社団法人シャンティ国際ボランティア会(SVA)専務理事代行

三橋成文師
オーストラリア等海外にも何年か在住。証券マンから出家し、無着成恭老師の徒弟。社団法人シャンティ国際ボランティア会(SVA)宗教部門担当

染谷典秀師
茨城県猿島郡総和町安禅寺副住職。曹洞宗報の付録「寺スクール」でおしゃかさまの十大弟子を執筆中

この4人の方に何かとお世話になりながらの旅でした。

今回の目的地ダゥム・ポー小学校は、カンポート州アンコール・チェイ郡チャムペイ集合村ダゥム・ポー村にあり、プノンペン市から75キロ南に行ったところです。この小学校に通学する地域は、ダゥム・ポー村、カセコー村、クライン・コー村、トラバイン・ケ村で、この地域住民の人口は、4,229人、在籍児童325人、就学児童436人。100名余りが農作業・家事・幼い兄弟や家畜の世話など家の手伝いとの両立が難しく、登校できないでいます。これは、家庭の貧困が原因です。
小学校建設を発願された佐野俊也師は、「実際にどのような学校がどのように建設されるのか自分の目で見てみたい」ということで、今回カンボジアに出掛けたということです。

ダゥム・ポー小学校では、村長、校長、教頭、先生、学校建設委員の方々との話し合いの中で、佐野師が建設事業費の援助を約束。廃校になるかもしれないという状況の中、援助が決まると、涙を流して喜んでくれました。

事業実施団体…社団法人シャンティ国際ボランティア会(SVA)
事業予算…470万円(外務省のNGO補助金140万円含む)

カンボジアについて

カンボジア国旗と地図:外務省HPより

カンボジアの国旗と地図:
外務省ホームページより

カンボジアの公式国名は、カンボジア王国といい、面積は18万平方キロメートル(北海道の約2倍)、首都はプノンペン。人口は約1千143万人(1998年の国勢調査)人口増加率は、年率約2,4%。言語はクメール語(モンクメール語族に属する)。民族はクメール族(90%以上)その他 チャム族(約20万人)ベトナム人(約10万人)華人(約5万人)クイ族、タンブーン族、スティエン族、プノン族、ポー族、ジャライ族など20余りの民族で構成されています。
宗教は、仏教徒(上座部小乗仏教)が80%、続いてイスラム教徒、カトリック教徒です。

通貨は、リエル(Riel)(1ドル=3900リエル)。政体は、立憲君主制で、元首はノロドム・シアヌーク国王。
1953年11月9日にフランスより独立。丁度この年に私も生まれていますが、誘ってくれた佐野俊也師も同じ年に生まれています。「覚えやすいね」と言って、ふと感じたのは、同じ時期に東京で(彼は早稲田大学ですが)それぞれ勉強していたんですよね。
時差は、日本より2時間遅れ。在留邦人数は、約300人。

このカンボジアに学校建設が何故必要なのか。
ポルポト政権時代には、沢山の有識者が虐殺されたのと、100万人を越す人々が国外に流出しました。その為、人材の育成と基礎教育整備の早期実現が最重要課題となっています。

教育青年スポーツ省によると、1998年度の終了時点で、午前と午後の2部制を目指した場合、全国の小学校で1万2千278教室が不足しています。仮に1棟5教室として単純計算しますと、約2千455棟が不足していることになります。2部制の場合、1日に受けられる授業時間は4時間以下で、年間では636時間。これは世界的な最低水準である年間900時間よりも大幅に少ないことになります。

カンボジアにおける社団法人シャンティ国際ボランティア会(SVA)の学校建設事業は、1991年に外務省の要請を受け、事務所を設立すると同時に開始されています。当初は業者に委託した建設を行っていましたが、子ども達が教育を受ける重要性について住民自ら取り組む必要があると考え、一方的なものではなく、住民と共に教育問題に取り組むことを目的とし、事業後の就学率向上、学校維持管理状態の向上を目指した「住民参加型」事業としての学校建設に取り組んでいます。

外務省HP内・カンボジア
カンボジア政府観光局